レトロ浪漫の旅「木造駅舎」

日本の木造建築を語るうえで、忘れてはならないのが木造駅舎です。明治・大正・昭和と時代の面影を今に残し、鉄道ファンならず建築愛好家たちを虜にする木造駅舎は、日本の建築様式の移り変わりと、木造建築の粋を伝えてくれる貴重な財産といえます。そこで今回は、現在も実際に見に行くことができる素敵な木造駅舎をご紹介します。


旧京都電鉄(現JR)二条駅舎

明治37年に竣工し、平成8年にその幕を閉じるまでは日本最古と言われた駅舎です。社寺建築を採用した駅舎の玄関ポーチの鬼瓦には、京都鉄道の社章があしらわれ見どころの一つとなっています。京都御所にも近いことから天皇や皇族が利用する機会も多く、貴賓室も設えられており、今も当時の面影を見ることができます。現在は、今年4月にオープンした京都鉄道博物館に移築され、一般公開されています。

住所:京都府京都市下京区観喜寺町

JR因美線 美作滝尾駅

昭和3年より、今も地域の人々の暮らしを支える木造駅舎。駅舎愛好家の間では昔から人気のある建物でしたが、1995年に公開された「男はつらいよ」シリーズの最終作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」のロケ地として有名になり、全国から多くのファンが押し寄せました。田園の中にぽつりと佇む美しい姿は、戦前から変わらず今も私たちを出迎えてくれます。

JR門司港駅

明治24年に建てられ、大正3年に現在の場所に移築・新築された門司港駅は、ドイツ人技師ヘルマン・ルムシュッテル監修の元、ネオ・ルネッサンスと呼ばれる左右対称の様式で建てられた、九州最古の木造駅舎です。駅のすぐ傍には関門海峡があり、行き交う船を眺めながら潮風を感じることができるのも魅力の一つ。当時の面影は、駅舎内の至る所に残っており、特にトイレの青銅製の手水鉢や、大理石とタイルばりの洗面所などは必見です。

山形鉄道 西大塚駅

大正3年の開業時のままの姿を今も見ることができる貴重な駅。木造の引き戸や窓枠などのほか、昭和46年の無人化以来40年以上たった今も、出札窓口や手荷物扱い口など、当時の面影を辿ることができます。冬には屋根がすっぽりと雪に隠れ銀世界に佇む姿も美しく、2015年には駅本屋及びプラットホームが登録有形文化財に指定されました。

JR日光駅

日光東照宮や日光二荒山神社、日光山輪王寺など「日光の社寺」が世界遺産登録されて以来、さらに賑わいをます日光の玄関口。初代の駅は質素な平屋建てでしたが、大正2年に2代目駅舎が完成し、ネオ・ルネッサンス様式のアルプス以北の北方ヨーロッパで見られるハーフティンバー様式を用いたモダンな駅舎として脚光を浴びました。開業当時一等車利用者用待合室であった「ホワイトルーム」やシャンデリアや大理石製の暖炉が設えられた貴賓室も残っていて、大正ロマンの香りを今も漂わせています。

JR山手線 原宿駅

都内最古の木造駅舎として名高い原宿駅は、今も多くの乗降客で賑わっています。大正13年築の駅舎はまさに和洋折衷を思わせる、英国調のハーフティンバーや屋根の塔などがひときわ目をひき、大都会にありながら大正ロマンあふれる雰囲気が日本の古き良き時代の面影を後世に伝えています。ただ、2020年の東京オリンピックに合わせ駅舎の建て替えが検討されているため、実際に見られるのはここ数年に限られる可能性も出てきました。

いかがでしたか?
寺社仏閣や古い町並みだけでなく、駅舎にも日本の木造建築の歴史を感じることができます。もし、旅行など近くに行かれる予定がありましたら、ぜひ実物を見てみてください。きっと木造建築のぬくもりや居心地の良さを感じていただけるかと思います。